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田尻徳風保育園

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本の紹介
ツバメ

  • 節分の鬼

     この前、2019年が始まったと思ったら、もう1月もおしまいですね。「光陰矢の如し」と言いますが、時間はあっというまに過ぎてしまうもの。少しでも、中身ある日々や時間を子ども達と過ごしたいですよね。

     

     この時期、園長が子ども達に毎年披露する手作り紙芝居があります。それは「節分の鬼」というもの。『まんが日本昔ばなし』の本で、一度読んでとても気に入ってしまい、「ぜひ、子ども達にも(そして職員にも)聞いてほしい!」と思い、数年前に作ってみたのです。

     

     ストーリーがいいんです。山里に住むおじいさんは、小さなお墓にお参りすることだけが楽しみでした。それは、おかみさんと一人息子のお墓です。二人を病気で亡くして以来、おじいさんはずっと一人なのでした。はやく、自分のところにもお迎えが来てほしい・・。そういって、いつまでもお墓に手を合わせているのです。
     
     
     冬になり、今日は節分です。「鬼は外、福は内!」。楽しそうな声が聞こえてきます。おじいさんは、息子との楽しかった豆まきを思い出しました。思い出せば涙があふれます。その時、昔つかっていた鬼の面を探し出したのです。おかみさんとも一人息子とも別れてしまい、福の神にも見はなされていると思ったおじいさんは、次のように豆まきをするのでした。

    「鬼は~内、鬼は~内。福は~外、福は~外っ」

     

     豆がなくなってしまい、おじいさんが座り込むと声がします。「おばんで~す。」と呼ばれつつ、戸を開けると・・・何と、そこには「鬼は~内」の声につられて、鬼たちがやってきていたのでした!さぁ、おじいさんと鬼たちの、ちょっと変わった、でもとても素敵な節分の夜が始まります。

     
     全部紹介することはできませんが、鬼たちとおじいさんの交わす約束がいいのですね。そしてその約束をうけて、おじいさんがおかみさんと息子の墓前で語る場面がすばらしいのです。大切な人を失う寂しさ、楽しかった思い出、そして待っている誰かがいる喜び・・・私たちが生きていくときに大切なものが何であるかをそっと教えてくれます。涙と共に、元気もわいてくるとても素敵なお話です。

      
     参照『決定版 まんが日本昔ばなし101』川内彩友美/編 講談社 
     

    2019年1月31日
  • もいもい

    作 市原 準
    監修 関 一夫
    発行所 ディスカバー トゥエンティワン
     

     最初にお話しておきます。現在、この本が0歳児クラスの人気ナンバーワンです!

     
     『もいもい』とは、変わったタイトルですよね。実は、この絵本は東京大学が関わっています。以前、保育園の掲示板に新聞記事を紹介していたこともあるのですが、「赤ちゃんが本当にすきな絵本は、どのような絵本か」について、研究・実験の結果たどり着いたのがこの一冊なのです。
     

     赤ちゃんについての学問はかなり進んでいて、「赤ちゃん学」という名称もすっかり定着しました。その中で赤ちゃんについての常識はどんどん変わっています。結論から言えば、赤ちゃんは私達が思っているほど受け身ではなく、かなり能動的に外界に働きかけ、自分の気持ち、好みも持っているということでした。
     

     
     例えば赤ちゃんは「明るいはっきりとした色が好き」と思われていますが、赤ちゃん学によると、案外あいまいな色が好きなのだそうです。また、親子に手品師のキャラクターを数種類見せました。その結果を判断すると、大人と赤ちゃんとでは好きな絵が全く違ったそうです。

     
     つまり、「あかちゃんはこれが好きだろう」と勝手に大人が決めると、実は全く見当違いかも・・ということもあるのかもしれません。『もいもい』は数あるイラストの中で、赤ちゃんが最も長く見つめていたイラスト(=人気がある)だったそうです。泣く子もだまるほど注目するらしいです。

     
     大人が読んでも、よく分かりません。でも、確かに保育園の赤ちゃんたちはじっと注目したり、保育士の読む声に合わせて「もい、もい」と可愛く声を出してくれています。繰り返しますが、現在赤ちゃん人気ナンバーワン!試しに読んでみる価値は、十分にありますよ。

    2018年10月3日
  • 100万回生きたねこ

    作・絵 佐野洋子
    発行所 講談社
     田尻徳風保育園の園だよりで、この「本、だーいすき」を連載しているのですが、今回120回目となりました。120回?ふと、気づいたのですが、つまり10年間連載したということになります。

     
     ずいぶんと長い間連載できたなぁ、と感慨にふけるまもなく、記念すべき号に何を紹介するかずっと考えていました。記念となる、思い出に残る一冊かぁ・・・。

     
     と、考えた結果選んだのが今回の『100万回生きたねこ』です!

     
     今年の5月に山梨県立美術館に『100万回生きたねこ』原画展を見に行ったのですが、やはりこの一冊は外せません。最初にいつ読んだのかは覚えていません。でも、今でも、そしていつ読んでも気持ちを新たにできる本です。大げさに言えば、生き方を考えてしまう力があるのです。
     

     「100万年も しなない ねこが いました。100万回も しんで、100万回も 生きたのです。」冒頭から、いきなり話が展開し、ここだけでこの絵本が特別なものであることが分かります。ねこは、様々な人に出会い、そしてまた死をもって別れていきます。あるとき、ねこはだれのものでもない、のらねこでした。「ねこは はじめて 自分の ねこになりました。ねこは 自分が だいすきでした」。初めて、自由を手に入れたのでしょう。ねこは100万回しんだことを自慢にしていました。

     
     ところが、周りのねこがちやほやする中、一匹の白いねこだけは興味を示しません。そうすると不思議なもので、なんとかして関心をひこうとしますが、一向にダメ。その後、ねこは言うのです。「そばに いても いいかい」と。ねこには、自分よりもたいせつなものができたのです。
     

     
     最後にくる別れ。しかし何故か「よかった」と思える秀逸なストーリー。100万回生きるよりも大切なこと―それをねこたちは教えてくれます。これからも、多くの子ども達に読み継いでいきたい、大切な一冊ですね。

    2018年8月17日
  • コブタの気持ちもわかってよ

    作 小泉𠮷弘
    発行所 ベネッセ
     容易に感想を言葉にすることが出来ない絵本があります。描かれている内容はシンプルなのに、感想を述べるのに躊躇するのですね。私にとっては、以前紹介した『いのちをいただく』がそうでした。今回は、それ以来の戸惑いをおぼえながら文章を書いています。

     
     主人公はコブタくん。コブタくんのつぶやき、いや、静かな叫びでお話は進んでいきます。
    「ママはいつも『はやくあるきなさい』という。ボクは犬のことや花のことやまちのことをもっとゆっくり見ていたいのに」
    「おおきなこえで泣きはじめたとたんに『泣くな』っておおきなこえでおこられた。かなしいきもちはボクのなかにとじこめられる。ボクはかなしみをはきだせない。」
    「ボクいいこになるよ。だからそんなにおこらないで。いいこになればおこられないよね」

     
     この他にも、コブタくんの気持ちが少しずつ吐露されていきます。私達って、人の気持ちを分かったつもりでいますよね。でも、本当にそうなのでしょうか。子どもの気持ちを一番知っているのは、親なのでしょうか。子どもは何を見て、何を本当は感じているのでしょう。最後のページに、今後への希望を感じさせる一冊です。子ども、保護者、職員、色々な方に読んでいただきたいですね(園長)

    2018年7月19日
  • 未来のだるまちゃんへ

    作 かこさとし
    発行所 文藝春秋
     明らかに絵本界にとって「巨星堕つ」というほどの出来事なのですが、そのように感じさせないのが、かこさんのお人柄なのでしょうね。今年の5月2日に、かこさんがお亡くなりになりました。92歳でした。かこさんのことは詳しくなくても、『だるまちゃん』シリーズ、『からすのパンやさん』など作品はお読みなった方も多いでしょう。

     今回紹介した本は、かこさんの自伝です。その中に、絵本に込められたメッセージ、そしてかこさんが絵本に取り組む姿勢が詳しく述べられています。どの頁を読んでも、そこには子どもたちを肯定する姿、そして生きることの喜びが述べられています。「だから僕は、子どもたちには生きることをうんと喜んでいてほしい。この世界に対して目を見開いて、それをきちんと理解して面白がってほしい。」など、子どもたちに投げかけるべき言葉を、たくさん教えてくれます。。

     
     そのような子ども観を持ったのは、幼い頃の戦争の経験があるからでした。かこさんは言います。「僕は、いつか『戦争』を描いた絵本を出したい、出さなければ、と思い続け、何回も企画を立てては、自らボツにして、いまだに果たせずにいます。(中略)あと余命がどのくらいあるかはわからないし、果たして間に合うのかどうか。しかし、なんとしても間に合わせなければと思い続けているのです」。私たちは、どのようにかこさんの思いを継承できるでしょうか・・・

    (園長)

2018年6月4日
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