こんな本を読んでみませんか
おすすめのよみもの
このコーナーでは園長や職員が読んでみて、面白かった本を紹介していきます。
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戦争をやめた人たち
作・絵 鈴木 まもる
発行所 あすなろ書房副題は「1914年のクリスマス休戦」です。第一次世界大戦の時のお話です。第一次大戦は、第二次大戦より日本人にとっては何故か印象がうすいですよね。実は、大きな意味がある戦争だったのですが、その中での有名なエピソードがもとになっています。
1914年12月24日の出来事です。フランスやベルギーに攻め込むドイツ軍と、イギリス軍の最前線。もちろん両軍とも、一日中ずっと銃を打ちあい、疲れ果てていました。イギリス軍の兵士が言います。「いえにかえりたいなあ」「いつになるやら」「かえったら、またみんなでサッカーしたいなあ」。当初は、すぐに終わると思われていた戦いでしたが、中々終わりませんでした。
そのような時に「なにかきこえる。なんの音だろう」と、若い兵士が顔をだしました。すると、向こうのドイツ軍から聞こえる歌でした。そしてその歌は「きよし このよる」でした。そう、今日はクリスマスイブです!「ドイツにもクリスマスがあるんだな」「いっしょに歌おうか」。そして両軍の合唱が始まったのです。そして夜が明けた25日。ドイツ軍の兵士が出てきました。しかし、その手には銃を持っていなかったのです。それに対応しイギリス兵も出ていくと、さぁ奇跡の始まりです!
戦争を始めるのは簡単だが、終わりにするのは難しい、とよく言われます。その難しさを超えるヒントがここに描かれています。今こそ、必読!
2022年8月2日 -
ボクサー
作 ハサン・ムーサヴィー
訳 愛甲 恵子
発行所 トップスタジオHR珍しいイランの絵本です。イランと聞いても私たちは中々イメージがわきません。だからこそ、こうやって絵本を通じて出会うことがうれしいですよね。ページを開くといきなりボクサーが打っています。「ボクサーは、打って、打って、打った。昼も、夜も、何年も」。ボクサーは来る日も、来る日も打ち続けました。「打って、打って、すべてを打った」。その相手は草原であり、雲であり、木など様々。そのうち、父の形見であり、母のハートの刺繍がぬいつけてある大切なグローブは、だんだんと色あせていきました。それでもボクサーは打ち続けます。岩を砕き、大波を引き起こし、全ての物を打ち続けたのです。そしてある時、気づくのです。もう打つ物が何もない。ひとりぼっちになっていることに。ボクサーは思います。「どうして父さんはボクシングを教えてくれたんだろう」。「父さんのこぶしをうごかしていたのは、なんだったのか」。その答えを見つけた時、ボクサーに大きな変化が表れたのでした・・・。色彩の豊かさがすごい!外国の絵本は、日本のとまた風合いが違うから面白いですね。ストーリーも劇的ではありませんが、考えさせられます。その拳を何のために使うのか?あなたをうごかすものは何?ボクサーなのに人間の対戦相手が出ないのも意味ありげ。ぜひ!の一冊です。2022年8月2日