こんな本を読んでみませんか
おすすめのよみもの
このコーナーでは園長や職員が読んでみて、面白かった本を紹介していきます。
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おにたのぼうし
作 あまん きみこ
絵 いわさき ちひろ
発行所 岩崎書店2月と聞くと、やはり思うのは雪景色と節分ではないでしょうか(あと最近では恵方巻)。節分についてのお話を紹介したいと思い、今月はこの一冊。約50年間読まれ続けている、名作中の名作ですね。
節分の夜、物置小屋の天井にくろおにがいました。名前は「おにた」。とっても、気のいいおにで、人間の洗濯物をしまってあげたこともあります。でも、節分の夜は大変です。まめまきの音を聞いて、物置を出ていきました。でも、どこの家にも「ひいらぎの葉」(おにの目をさします)が飾ってあるので入れません。ところが、一軒だけ入れる家がありました。ところが、その家はお母さんが病気で寝込んでいて、ちいさい女の子が食べる物もないまま、看病しているのでした。おにたは、背中がむずむずして、じっとしていられなくなり・・・、
あまんさんの文章って、しみこみますよねぇ。このお話でもおにたの優しさがよく分かり、それだけに女の子の言葉に傷つく気持ちもよく分かります。けれど女の子も、お母さんを傷つけまいと、たくさん我慢しています。それだけに、おにたがきてくれて嬉しかったに違いありません。だけど、それなのに・・・あぁ、思いって何ですれちがうのでしょうねぇ。ぼうしで角をかくしたおにたの「おにだって、いろいろあるのに。おにだって・・」という言葉が、胸に余韻を残していきます。人は、人のどこを見て判断しているのか。今だから、なおさらこの本が読まれるべきなのかもしれません。(園長)
2017年2月13日 -
はじまりの日
作 ボブ・ディラン
絵 ポール・ロジャース
訳 アーサー・ビナード発行所 岩崎書店1月も10日を過ぎて、日常の生活が戻ってきましたね。お正月気分が抜けるどころか、お正月なんてあったかな、という気持ちになるほど、いつも通りの生活となりました。でも、その時に忘れてしまったのが、新年に感じた「特別な1日」という思いではないでしょうか。そのようないつもの日常に戻った私達に、振り返る目を与えてくれるのが、今回の絵本『はじまりの日』です。著者はボブ・ディランさん。昨年、ノーベル文学賞を受賞したことで話題になりましたね。日本でもファンは多いですが、同時に「ディラン?誰?」という反応もありえるでしょう。一言で説明するのは難しいので、ぜひ曲を聞いてみてください。『はじまりの日』の原題は”FOREVER YOUNG”です。これはディランさんが息子が誕生した時に、願いを込めて作った曲です。ですから歌詞には父親としての個人的な思いが込められているのですね。でも、読んでみると多くの子ども達に届いてほしい言葉が並んでいます。こちらも、ぜひ読んで確認してみてください。
翻訳というのは大事ですね”FOREVER YOUNG”を「はじまりの日」と訳すセンスを私は持ち合わせていません。これはアメリカ生まれで、日本で詩作活動を続けているビナードさんならではでしょう。「毎日が きみの はじまりの日」という言葉を読むと、日常が少し新鮮に感じられてきます。
ぜひ、ディランの曲を聞きながら、親子で読んでみてください。聞いて、読み進めるうちに、じわりとしみ込んでくる名曲と名作です。(園長)
2017年1月12日