本の紹介
ボクサー
作 ハサン・ムーサヴィー
訳 愛甲 恵子
発行所 トップスタジオHR
珍しいイランの絵本です。イランと聞いても私たちは中々イメージがわきません。だからこそ、こうやって絵本を通じて出会うことがうれしいですよね。
ページを開くといきなりボクサーが打っています。「ボクサーは、打って、打って、打った。昼も、夜も、何年も」。ボクサーは来る日も、来る日も打ち続けました。「打って、打って、すべてを打った」。その相手は草原であり、雲であり、木など様々。そのうち、父の形見であり、母のハートの刺繍がぬいつけてある大切なグローブは、だんだんと色あせていきました。それでもボクサーは打ち続けます。岩を砕き、大波を引き起こし、全ての物を打ち続けたのです。そしてある時、気づくのです。もう打つ物が何もない。ひとりぼっちになっていることに。
ボクサーは思います。「どうして父さんはボクシングを教えてくれたんだろう」。「父さんのこぶしをうごかしていたのは、なんだったのか」。その答えを見つけた時、ボクサーに大きな変化が表れたのでした・・・。
色彩の豊かさがすごい!外国の絵本は、日本のとまた風合いが違うから面白いですね。ストーリーも劇的ではありませんが、考えさせられます。その拳を何のために使うのか?あなたをうごかすものは何?ボクサーなのに人間の対戦相手が出ないのも意味ありげ。ぜひ!の一冊です。
2022年8月2日